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新・悪名 (1962年)

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おおきに、ありがとうさんです(^-^)ノ

 

3月27日、この映画を観ました・・・カチンコ

 

 

 

 

 

新・悪名 あくみょう

 

 

『悪名』シリーズの第3作です。

 

満州事変からずっと戦争に行かされてた陸軍上等兵の朝吉はん、ようやく復員できることになりましたんでっけど、なんと日本では「戦死したこと」になってましたんや。

 

私も2作目の『続・悪名』(1961年)を観た時にはすっかり朝吉はん、弟分のモートルの貞もあの世へいんでもうたし、本人の心にも覚悟が見て取れたし、これは戦死しやはるわと思てたんどすけど、さすがは八尾のケンカ自慢、戦争を生き抜いてはりました、ってゆうか、ヒットしてるので映画会社が無理にでも続けたかったんは火を見るより明らか。

まあ、それはそれでよろし。

 

 

帰ってきたら朝吉はん、戦死したことになってて、墓も建ってましたがな、とにかく朝吉はんが生きて帰ってご家族は大喜び。

 

この映画の公開が1962年、戦後17年でっか、3作目のテーマは「敗戦直後のボロボロのニッポン」といったところでんな。

 

 

ところが他のことはともかく、朝吉はんが死んだと思うたお絹(中村玉緒さん)が他の方と再婚してはって・・・お絹はそれでも浅吉はんのことを思ってましたが、再婚してしもたからにはどないもならへん。

朝吉としてはお絹に待っててほしかった気持ちもあり、手荒に別れを告げましたんや。

 

もちろん、皆さんご存知のように勝さんと玉緒さんは現実では添い遂げることになったんだすけど。

 

 

お絹から今は亡きモートルの貞の遺された妻であるお照(藤原礼子さん)が大阪の阿倍野の闇市にいてはるかもしれへんことを聞いた朝吉は、そこへ行きましてな・・・この風景、セットやおまへんか。

1962年、ようこんな大掛かりなセットを作れたもんでっせ。

 

 

お照さんと再会した朝吉はひとしきりお絹と別れた経緯を愚痴り・・・ここで「ママー」とお照さんの息子くんが登場ですが、あの~、朝吉は14年も戦争に行ってたんでっしゃろはてなマーク

息子くんは13~4歳にはなってへんとおかしいけど、どう見ても10歳より下。

計算が合わんな~。

 

当時、「街に立って袖を引く女」のことを「パンパン」と言うたそうですが、ええ言葉やおまへんな。

でも、映画を観る限りでは普通にそんな言葉を使ってた世相やったんでっしゃろな。

 

お照さんから貞やんの国が徳島やと聞いた朝吉はそちらへ向かい、貞やんのお母はんと会います。

 

貞やんのお兄さんは戦争に取られ、一人残った弟はお母はんを捨てて行きよったそうで、お母はんの暮らしは酷いもんでした。

朝吉はお母はんに頭を下げて、一緒に八尾へ行ってくれるよう懇願します。

 

朝吉に対してかたくなな態度を崩さへんお母はんでしたけど、来るのは来てくれはることになり、八尾へ連れ帰ったんでっけど、朝吉の家族の暮らしぶりも豊かではないし、迷惑に思ったんやけど、朝吉も自分のせいで命を落としたも同じの貞の遺されたお母はんがそれでは気がすまへん、いてもらうことにする。

 

 

次の日は朝吉のお墓の取り壊し作業どしたけど、そこで朝吉の友達やった弥吉の妹、月枝(浜田ゆう子)と会いました。

弥吉はラバウルで戦死しはったそうです。

 

夜、朝やん生き返りの酒盛りに向かっていた月枝に進駐軍が性犯罪に及び、村の人たちは大騒ぎになったんやけど、やったのが進駐軍ゆえに警察に届けることにも怖気づく始末。

朝吉は何とかしようと夜の道を走ったが、アカンかったようどす。

月枝はこの時代の女子の悲しさ、そういった形で辱めを受けたことはまるで自分が悪かったかのように走り去る。

 

その後、朝吉がうちを訪ねると月枝は家を出ていた。

 

朝吉にとってみたら自分ら兵隊が戦争でよう勝てなんだことで日本の人々が苦しんでるっちゅう心境だす。

なのに己は生きて帰って・・・。

 

わいもあの、焼け野原のどん底で、戦争に痛めつけられた人間と、一緒に釜の飯が食うてみたいねん ―― そんな気持ちで巡礼のように大阪へ出ることを決めた朝吉。

 

 

朝吉の情に負けたお照さん、亡くなった貞やんのお母はんは言わばお姑さん、お照さんが面倒を見ることになりました。

戦後の、誰もがしんどい時代ですやん。

ホンマよう言いなすったわ。

 

けどな、この貞やんのお母はんを演じられた武知杜代子さん(=武智豊子さん)の演技、そしてお母はんの微妙な心持ち、それを見てたらなんかうちも涙が出てきてな、血ぃはつながらんでも親孝行したなる、そんな感想でおます。

こんなおばあちゃんにこの歳で苦労さしたらアカンよビックリマーク

この時代の日本映画、学ぶことも゚多おまんな。

 

ところがお照さんがお母はんと話しててわかってきたのは、清次ゆうて、貞やんと気持ち悪いほどよう似たんが、阿倍野の闇市にも来ますのや。

 


そんで貞に似た男を探していた朝吉、そこで偶然、明らかに夜の女になり果てんとしてた月枝を見つけ、連れ帰ろうとしたところが現職にして原色なストリートガールズに難癖をつけられ総攻撃。

これがまた手強く、世が世ならヒョードルにも勝てた朝吉でもかないしまへん(単に女には手が出せへん朝吉なわけでっけど)。

 

ところでここらへんは大阪のどのへんなんやろか。

 

 

罰として月枝の髪を切って、もめてたところに変な英語を話す超うさんくさい長身の男がジープで登場。

この男が英語交じりにきれいごとはぬかすけど女性たちの元締めをやってくさる清次ですわ。

 

このあたり、詳しくは省きまっけどな、朝吉が月枝を連れ帰りたいのに、要は清次、支度金をまどしてもらわんと困りまっせと。

 

 

清次とそんなことをしてる「らんちゅうのお銀」、茶川一郎さんの当たり役やったそうでんな。

いかにもなオネエなんでっけど。

 

結局、月枝をよそへ預けて返さん清次と話をつけようとした朝吉、ケンカになるんやけど、朝吉はんも歳でしょうか、清次も強いなあせる

 

ストーリーはこのくらいにしまっけどな、お話ししておきたいことがおまんねわ。

 

 

お照さんによりますと、お照さんが大福のお店を出してはる闇市、「あそこは第三国人が押さえてまんねん」とセリフで語られます。

 

「第三国人」、「三国人」は今では聞きなれない言葉ですが、2000年4月9日、陸上自衛隊練馬駐屯地における記念式典で当時、都知事だった石原慎太郎氏が使用したとのことです。

 

言葉としては、敗戦直後の時期、日本在住の朝鮮人や台湾人などを指す言葉として使用されていたそうです。

 

私にも難しいのですが、しかし、今現在、間違っても差別、蔑視の意味合いで使ってはならない言葉だと思います。

 

『新・悪名』が作られた1962年当時にはどういった意味合いで使われた言葉なのでしょう。

映画を観た中では、どうしても差別的な使われ方だと思いました。

「日本人とは違う」ことが強調されているとすぐに感じられたからです。

 

私はお照さんのセリフに「第三国人」が使われた時から、映画を「観る」、「楽しむ」ことから「考える」ことに移行したと思います。

2022年の今、その言葉を1962年公開の映画の中で聞くことは、私を困惑させ、敏感にさせることでした。

 

セリフが聞き取りにくいのでハッキリ何を言ってるのかわかりませんが、闇市を傲慢に取り仕切っているのが「三国人」であり、「あんな三国人」の下についている清二について批判的に朝吉も口にします。

 

お前らあんな第三国人にあんなことされて黙ってけつかるんかい。そやからお前らなめられてまうんやないけ。しっかりせなアカンで

大好きな勝新太郎さんがセリフでこう言う時、私は「これは私の好きな朝吉とは何か違うのではないか」 ―― まずそう思いました。

 

 

闇市のおとなしそうな人(伊達三郎さん)がこう言います。

 

しかしね、大将、あの連中も長い間日本人に馬鹿にされて酷い目に遭わされてきたんですよ

 

それに対して朝吉はこう説明します。

 

わしは三国人やゆうて(※聞き取れませんでした)するのは嫌いやねん。昔から弱いものの味方で来たんや。そらあお前長い間虐めぬかれてきよった連中や。やっと独立国になって嬉しさもようわかる。嬉しいことやろ、なあ。そら喜んでやりたいがな。そやけどやなあ、こうゆう時にこそ立派な国民になってみせることやないけ。なあ、そやろ。それをお前、あんなことしよったらやっぱりアカンやっちゃ思われてもしゃあないやないけ、なあ

 

朝吉の言い分としては、日本の植民地支配から解放され、また独立した国に祖国が戻ったんやから、日本でも暴れたりせんと立派に暮らせ、そういった意味ではないでしょうか。

 

 

仰る通りや。ようゆうてくれました、おおきに

 

われが礼ゆうことあらへんやないけ

 

私は第三国人ですよ

 

 

この闇市の利権と、立ち退き問題に裏があり、朝吉は昔の仲間と再会しつつも弱い人たちのために立ち上がることになるのですが、その敵側にそれまで植民地だった国の人たちがいた設定です。

 

セリフの中でどの国の人たちと明言されてはいませんが、台湾の人たちか朝鮮の人たちになるのでしょうか。

私は歴史に詳しくないので、そこまで分析できないのですが、日本がアジア諸国を植民地化していく中で、日本人全体に差別の意識が定着していったのでしょうし、程度はともかくそれが今も残っているのは間違いないでしょう。

日本人がアジアを語る時、その名残りが色濃く出るのだと思います。

それが深い問題だと思うのです。

 

この映画における「三国人」への朝吉の言葉には勝さんの名演もあり、確かに説得力があるように思えます。

 

しかし、これは脚本と物語ですが、そこで「三国人」役の俳優さんに「仰る通りや。ようゆうてくれました、おおきに」とセリフで言ってもらのはそこまでの説得力がない。

そこには日本人の観客に向けた甘さを感じました。

 

それは本当は、観ている観客に委ねられるべきでしょう。

 

「闇市では三国人が威張っていたのだ。戦後、日本人は仕返しされたのだ」とイメージさせる映画に私は出会ったのですが、日本の闇市が登場する韓国映画、『風のファイター』(2004年)があり、もしかすると台湾映画にもあるのかもしれません。

日本映画も、もちろん『仁義なき戦い』(1973年)もあります。

 

『新・悪名』の中の闇市での場面が、どのくらい事実に基づくものなのかはわかりませんが、私は今の日本人たちがこの映画を観てどう考えるのかが不安に感じられました。

私自身、戦後の闇市の勉強をしたことがないのですから。

 

この作品は、終戦直後の日本の闇市での立ち退き騒動と、それに抗う戦いの映画なのですが、映画が作られたのが1962年だったことで、そういった物語になったんでしょう。

 

だからこの映画を21世紀の今日、観る時、ただ面白がるだけでは不十分だと思いました。

 

観終えてから、少し、ウェブで見つかるこの映画のレビューを読ませていただきましたが、私が納得できるご感想は今のところ、お一人だけでした。

 

『新・悪名』のセリフで「三国人」という言葉が使われていることが、まるで当たり障りのないことのようなら、私はそこに居心地の悪さを感じます。

昔の映画で使われていたからといって、今は野放図に使うべきではない言葉もあるのではないでしょうか。

 

伊達三郎さんが演じられた「堀さん」はその後、朝吉と行動を共にしますが、その姿が映るたびに物語上の弁解のように私は感じてしまいました。

堀さんはバランスの役でもあるのでしょう。

最終的に「三国人」は10人、朝吉の側として参加します。

 

では、どうすれば良かったのか難しいところですが、『新・悪名』が私にとって楽しいだけの映画でなくなったのが私の本音です。

 

いつかこの映画について誰かが書いているのを読んだ時、イヤな気分にはなりたくないものですね。

 

しかし、このことについては、前半において月枝が進駐軍に陵辱される場面があり、だから「進駐軍が日本人女性を辱めていたのだ」とイメージさせる映画でもあるのです。

そのことにも気を配らないとまた別の面で不完全でしょう。

 

 

喉に小骨が刺さっているような気分で映画を観ることになったけど、でも、朝吉の人柄は私を魅了されずにはいられません。

 

朝吉はお酒が飲めない体質なのに、堀さんの国の焼酎をあおり、3作目にして壮大な二日酔いに悩まされるのである。

 

それにしても酔いつぶれた朝吉をらんちゅうのお銀に預ける堀さんもたいがい無責任(^_^;)

 

 

清次の妻、お雪(万里昌代さん)。

 

 

後半ではまるで黒澤明監督の『野良犬』(1949年)と重なるシーンもおまんな。

 

 

私には素直に観られへん要素もおましたけど、それ以外はホンマに面白い映画や思います。

 

戦後の庶民の心情に寄り添うつもりの朝吉が、いつの間にかリーダーとして、生きるか死ぬかの苦労をしてはる闇市の人々を鼓舞し、悪と戦っていく話しは総じてええもんだす。

 

またうちの感想をここまで読んでもろうて興味を感じてくれはった方は是非、観ておくれやす。

 

次の『続・新悪名』(1962年)でっけど、うちもすでに観てますえ。

この『続・新悪名』、娯楽度、コメディ度、共に高くて清次も絶好調だす。

 

また次、書かしてもらいます。

 

ほな、おおきに、ごめんやす(^.^/)))

 

 

お前の受けた傷は、まあたいそうな話しやけど、日本の傷や。

めいめいがこの傷、ようう噛みしめて、出直さなしゃあない

なあ。

行こか。

 

 

新・悪名
A New Bad Reputation Story


1962年製作/99分/日本


劇場公開日:1962年6月3日
配給:大映

スタッフ・キャスト


監督 森一生
脚色 依田義賢
原作 今東光
企画 財前定生
撮影 今井ひろし
美術 西岡善信
音楽 斎藤一郎
録音 林土太郎
照明 岡本健一
編集 谷口孝司
スチル 三浦康寛

勝新太郎 - 朝吉
田宮二郎 - 清次
中村玉緒 - お絹
浜田ゆう子 - 月枝
藤原礼子 - お照
万里昌代 - お雪
須賀不二男 - 勝
沢村宗之助 - 金子
武知杜代子 - おふく
伊達三郎 - 堀
丸凡太 - 辰吉
淡波圭子 - 芳子
荒木忍 - 善兵衛
茶川一郎 - お銀
島田洋介 - 勘やん
今喜多代 - 勘やんの女房
鉄砲光三郎 - 河内音頭の男
浜世津子 - お兼
小松みどり - およし
加賀美健一 - 鶴吉
芝田総二 - 松造
三浦志郎 - 洗濯屋
岩田正 - 中年の男
三上哲 - 浮浪者
沖時男 - 綿製品を売る男
小南明 - 靴を買う客
井上武夫 - 進駐軍の兵士B
小中島亮 - 進駐軍の兵士A
西岡弘善 - 勝の若い者甲
谷口昇 - 勝の若い者乙
薮内武司 - 金子の若い者甲
安川洋一 - 金子の若い者乙
北野拓也 - 金子の若い者丙
南正夫 - バタヤの老人
種井信子
三藤愛子
辻村博子

(映画.com)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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